経済ブログ

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今、アメリカで売れている経済本

 フランス人経済学者、トマ・ピケティ氏の新著「21世紀の資本論」がアメリカで売れているらしい。内容は、米国繁栄の礎である資本主義に対する懐疑的な見方である。「資本収益率(株式や不動産といった資本の投資利回り)が国民経済の成長率を上回る構図にあるため、富が一部に集中して、社会の格差は拡大する運命にある」と資本主義の将来を悲観的に分析した。そして、過去200年以上のデータを用いて、「所得と富の分配史」を統計的にひもとき、資本主義は権力者が利潤配分の仕組みを利己的に決める弊害が内在していると述べている。

 米国の場合、格差は産業革命を機に拡大し、1910年は上位10%の富裕層が全体の富の80%を保有していた。2回の世界大戦を経て、その比率は60%に減るが、2010年には70%まで再び上昇した。相続税制の抜け穴が利用されて、事実上の世襲制が復活し、金融資本主義が政治と結びつくことで、経済成長率以上に資本家が富んだとしている。

 アメリカで何故売れたのかというと、最高のタイミングで、最も話題となっているテーマを取り上げたからのようだ。格差の問題は特に米国で、少し前からホットな話題として急浮上していた。米国人はこれまで何年も格差に関してはあまり関心がなかったようだが、ここへきて突然、ウォール街が過剰に富を得ていることに怒りが爆発、富裕層と富の再分配の在り方を問題にし始めたところだった。ピケティ氏は、富の集中は資本主義の本質であり、先進的解決策として、全世界で富に課税すべきだと説いている。